1. 新情報教育論 序論

人類の進化が加速している。 人間の長い歴史をものさしとして使うと、産業革命以降の進化は目に見えぬ速さである。
のろしを焚いたり、光を反射させたりして、簡単なメッセージを遠くへ伝える事から始まった人類の通信作業は、その後急速に進化し、活字、ラジオ、テレビなどが役割を担い、そして現在はインターネットがメディアの舞台に登場した。
電車に乗ると、携帯電話をさっと取り出し、恋人や友人にメールを送ることや、銀行の振込みを移動中のタクシーの中からネット経由で行える生活は、20世紀最後の数年間に突如として現れ、生活に入り込んできたものである。
インターネットは、現代人の心をつかみ、そしてあまりにも自然な姿で浸透し、現代社会と密接に結びつきながら、功も罪も含めて様々な影響をもたらし、今後もその発展したものが、次の世代に引き継がれていくであろう。
インターネットの前身であるパソコン通信の人口が1993年の時点で、わずか100万人に過ぎなかったが、その後インターネットにつながれ利用者は急増、1998年には1,700万人、2001年2月時点で3,263万6千人となり、インターネット利用人口はその後も着実に伸び続け、2002年3月現在で5,130万人に達している。(NIELSEN//NETRATINGSの公開資料より)
また、注目したいのは、携帯電話/PHSからのインターネット利用者が、2001年7月時点で約4,200万人おり、2000年の同月と比べると、1年間で3,000万人も増えている点であり、驚異的な増加である。(社団法人電気通信事業者協会の公開資料より)
世界に目を向けると、米国の市場調査会社IDC(International Data Corp.) http://www.idc.com/
が最近発行した調査報告「The Global Market Forecast for Internet Usage and Commerce」によると、世界のインターネット利用者数は、2005年までに世界総人口の15%にあたる10億人に達する見込みであることを発表している。
これに伴って電子商取引の売り上げも5兆ドルに達するという。昨年のインターネット利用者の34%は米国、29%が欧州と、インターネットの普及はこれまで欧米主体で進んできたが、2005年には1地域主導傾向が薄れ、より全体的な普及が見られるようになると予測される。
これほどまでにインターネットが急速に普及した要因は無数あると思うが、今やインターネットは私たちの生活空間のなかで、必要不可欠なものになりつつあるのは確かである。
それに伴い、日本では、高等学校の「情報科」、中学校の「情報とコンピュータ」、小学校での「情報教育 」すべてにおいて、次期学習指導要領には本格的な情報教育の始まりを感じ取ることが出来るようになった。
しかし、その情報教育は、「情報通信技術」「情報理論」「情報処理」といったコンピュータや通信関係を裾野にした領域を学ぶ情報工学系か、情報化が社会に及ぼす影響を分析する社会情報系かどちらかに限られており、横のつながりも薄いものである。
つまり、新しいコンピュータシステムの開発と、コンピュータとわたしたちの生活とのかかわりを、別々の形で教育し研究されているのである。 本来この二つの領域は切り離すことのできないものであり、総合的にとらえられるべきものである。
ここで基本に帰って考えてみたいのは、これからの情報教育は何を目指すべきなのかと言うことである。
また、これだけネット人口が増えているのにもかかわらす、『インターネット』を単一で研究されている文献や、研究者もまだまだ少ない状態にあり、活発な意見交換も行われていない状況にある。
これは、現代のインターネット自体が一般の社会と変わらず、統括するには、非常に幅広い知識が必要な上、技術の進歩が早く、各専門家たちの連携プレイが取りにくい状態にあるからであろう。
そのような状態の中で、日々ネット人口は増えつづけ、それに伴う事件事故などが、多く発生し、またネット依存症などの精神的な障害、またデジタルディバイドと呼ばれる、コンピュータを使える人、使えない人の格差が、日常生活に影響を与え始めている。
また、新聞・雑誌・テレビをはじめとする各マスメディアにネットの話題が上らない日はなく、その内容も、ビジネスから社会問題まで多岐に渡っているが、多くはネットの陰の部分に警鐘を鳴らしたり、不安をあおり立てたりするものであり、ネット社会と実社会との違いばかりをこと強調する内容が目立つ。
おそらく、記者の中でもネットを熟知したものはまだまだ少数派であるのか、多くの記者は、ネットの持つステレオタイプな印象をそのまま報道しているようにさえ感じる。
ここで、私はこの幅広い分野をまとめる、指揮者的役割、また新しいこの分野を研究する必要性を強く感じ、この教科を『インターネット・リテラシー』と名づけ、これからますます発展するであろう、インターネット社会に、タイムリーに対応し、またこの教科を土台に、各専門家たちがスムーズに意見交換できる、パイプライン的な役割が出来ることを望んでいる。

図1-1 インターネット・リテラシーと各専門分野との関係
こうした研究、そしてシステムの確立は、これからの情報化社会に適応していく上で、不可欠な能力といえると感じている。
いわば人類史的に見てきわめても、インターネットは極めて新しい現象であり、 それだけ理解困難な世界と、 どのようにつきあっていけばいいのか解決の糸口になるであろう。
今回のレポートは、情報教育の現状、インターネット社会を紹介、そして現在の問題点を健康面、心身面から考察した内容をお伝えすると共に、今後のインターネット・リテラシーの展望について考察する。